ホテル経営者が無断キャンセルによる損失を減らす方法

無断キャンセルはホテルの経営者にとって深刻な問題です。見込んでいた売上を失うだけでなく、予約が埋まっていたためその部屋を利用できなかった別のお客さんを逃すかもしれません。

ホテル経営をする上で、無断キャンセルが起こらないように事前に対策を取る必要があります。この記事では、ホテル経営における無断キャンセルを減らす方法、無断キャンセルの発生に備えてできることをご紹介します。

ホテル経営における無断キャンセルを減らすための施策

以下、ホテルの利用者の無断キャンセルを減らす方法をご紹介します。

予約画面でキャンセル料に関する規約を明示する

利用者が予約するとき、キャンセル料に関する規約をはっきり伝えましょう。万が一キャンセルになった場合、キャンセル料が回収しやすくなりますし、利用者も無断キャンセルしづらくなります。

ネットからの予約であれば予約画面に規約の内容を表示し、電話からの予約であればメールで伝えることが望ましいです。

予約時に必ず電話番号とメールアドレスを確認する

予約の連絡が入ったときに、必ず相手の電話番号、メールアドレスは控えておきましょう。心理的プレッシャーを与えることができるので、無断キャンセルに対する抑制に繋がるからです。

予約日の数日前に通知する

中には予約したことをうっかり忘れてしまうお客もいるようです。この場合、悪意はないけれど結果的に無断キャンセルしてしまう可能性があるので、予約日の数日前にメールや電話で確認の連絡を入れましょう。

万が一キャンセルになっても、早い段階でわかっていれば対処しやすくなります。

予約時の決算サービスを導入する

当然、ホテルを利用する外国人旅行客は増えてきますが、一方で外国人旅行客の無断キャンセルに頭を悩ませているホテル経営者は少なくないようです。外国人旅行客の場合、キャンセル料に関する規約を設けても、帰国されると回収が難しくなります。

今後、オリンピックに向けて外国人旅行客の利用が増えていくので、キャンセル料が回収できなかった場合に備えて、予約時に手付金を受け取ることをおすすめします。

外国人旅行客の多くはネットで予約するので、『Paypal』や『SQUARE』などクレジットカード決済ができるサービスを取り入れるとよいでしょう。

仮予約・自動キャンセルの制度を設ける

中には予約したが他のホテルへの宿泊が決まったため、そのままキャンセルするお客もいます。

キャンセルが決まった時点で連絡してもらえれば対処のしようがありますが、そのまま連絡してくれないケースもあるので、予約システムを仮予約と本予約の2段階に分けることをおすすめします。

仮予約の段階では予約を確定させず、指定の期日までに連絡をもらえた場合に予約を確定させ、連絡がもらえなければ予約を自動キャンセルする仕組みです。このシステムを導入させることで、本当に予約したいお客とそうでないお客をふるいにかけることができます。

無断キャンセルされた場合に備えてできること

続いて無断キャンセルが発生した場合に備えて、ホテルの経営者が事前に行っておきたいことをご紹介します。

空室がなく予約できなかったお客のリストを設ける

空き部屋がなかったために予約できなかったお客のリストを、氏名、予約日時と共にまとめましょう。中にはキャンセル待ちの方がいて、キャンセルされた部屋を案内できるかもしれません。

他社と協力体制を取る

近隣のホテルと協力体制を取りましょう。空室時はオーバーブッキングが発生しているホテルからお客を案内してもらい、反対にオーバーブッキングが発生しているときは、お客が足りないホテルへお客を案内できる協力体制がとれると理想的です。

キャンセル時に空室案内できるよう自社のSNSを用意する

ホテルの利用者に向けて、SNSで自社の公式ページを作成しましょう。キャンセルが発生したときに空室状況についてSNSへ投稿すれば、それを見た方から予約が入るかもしれません。

ドタキャン客にキャンセル料の請求は有効なのか?

キャンセルしたお客へキャンセル料を請求したいと考える方もいるでしょう。

契約は予約の段階で成立しているため、正当な理由のないキャンセルであれば、損害賠償を請求することは可能です。

ただし、請求が無効にならないために消費者契約法に沿ったキャンセル料に関する規約を設ける必要があります。詳しくは『今後キャンセル料の請求が無効にならないために必要なこと』にて後述します。

キャンセル料と請求にかかる費用を比較する

キャンセル料の金額によっては、請求にかかる費用と時間の方が高くつくかもしれません。

主に団体客からの予約やスイートルームのような、ある程度キャンセル料が高額な場合に、キャンセル料の請求は有効だと思われます。キャンセル料を請求する場合は、手続きにかかる費用と、キャンセル料を比較した上で判断しましょう。

※キャンセル料の算出方法については『今後キャンセル料の請求が無効にならないために必要なこと』にて後述します。また、請求にかかる費用については請求の手順に従って説明します。

キャンセル料の支払いについて連絡する

キャンセル料の請求は、できるだけコストを抑えるためにも、話し合いを通して解決を図ってみましょう。メールまたは電話を通じて、以下の内容をお伝えすることをおすすめします。

請求する旨

請求金額

金額の内訳(どのような損害を被ったのか)

請求する理由

また、通知の文面を考える際は、弁護士へ相談することをおすすめします。支払いに応じさせる上で、効果的な内容を教えてもらうことができます。弁護士へ依頼するとキャンセル料の請求について代理で交渉を行ってもらえます。当事務所に交渉を依頼した場合にかかる費用は以下のとおりです。

当事務所に交渉を依頼した場合にかかる費用

着手金:無料

成功報酬金:回収金額の33%(税込み)

内容証明郵便を通して督促する

連絡したが対応してもらえない場合は、内容証明郵便を通して督促状を送りましょう。内容証明郵便は、送り主、受取人、郵送日、文書の内容を、郵便局が公的に証明してくれるサービスです。

法的拘束力はありませんが、裁判に発展した際に証拠として提出できる上に、一般の郵便と比べて見た目にインパクトがあるので、精神的プレッシャーを与えられます。また、利用するために1,252円(文書が1枚の場合)かかります。

裁判所へ訴えを提起する

督促状を送っても解決しない場合は、法的手段へ訴えましょう。キャンセル料を請求する場合は、低コストかつ短期間に抑えることができる支払督促や少額訴訟を利用することが一般的でしょう。

今後キャンセル料の請求が無効にならないために必要なこと

キャンセル料の請求は、消費者契約法9条1条により無効になるケースがあります。

契約の解除に伴い事業者に生じる平均的な損害の額を超える金額を徴収する内容のキャンセル料条項は、その超える部分について無効である。

引用:消費者契約法9条1条

要約するとキャンセルにより生じる『平均的な損害の額』を超える金額は請求できないということです。消費者契約法によりキャンセル料の請求が無効にならないためには、『平均的な損害の額』を超えない範囲でキャンセル料を規約に設ける必要があります。

平均的な損害の額を算出する

宿泊のキャンセルにおける『平均的な損害の額』は、以下の計算式で算出できます。

『平均的な損害の額』=『キャンセルされなければ得ていた粗利益額』×『宿泊予定日にキャンセル分を補完する別の予約を確保できない確率』

そして『平均的な損害の額』は、キャンセル時から宿泊日までの期間に分けて設定することが一般的です。例えば宿泊日直前にキャンセルされると、別の予約者を確保するために十分な時間がありません。

この場合、『別の予約を確保できない確率』は高くなるので、満額に近いキャンセル料が設定できます。反対に、キャンセル時から宿泊日まで時間的余裕がある場合は、『別の予約を確保できない確率』が低くなるので、キャンセル料はゼロに近づきます。

キャンセル料の算出やキャンセルポリシーの作成は専門性を要するので、詳しくは弁護士へ相談することをおすすめします。

まとめ

無断キャンセルによる被害を抑えるためにも、日頃から対策を練っておくべきでしょう。ホテル経営者の方が無断キャンセルによる問題を改善する上で、本記事を参考にしていただければ幸いです。

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